H.006【独眼竜政宗】四

 本作では、その真田広之の演じる、松平忠輝と、沢口靖子の演じる、いろは姫が、夫婦となり、伊達政宗を翻弄することになる。

 なお、真田広之と沢口靖子は、本作の四年後の1991年の大河ドラマである、『太平記』において、本作と同様に、夫婦役として登場する。

 真田広之は、主役の足利尊氏を、沢口靖子は、尊氏の妻である、赤橋登子を演じている。

 本作において、政宗の側室、猫御前を演じるのは、秋吉久美子である。

 また、政宗と愛姫の嫡男の忠宗を演じたのは、野村宏伸であった。

 野村宏伸は、本作の時点では、無名に近かったが、本作以降、フジテレビ系の『教師びんびん物語』で活躍し、知名度が飛躍的に上がった。

 また、片倉小十郎景綱の隠居後、その後継者として、片倉小十郎重綱を演じるのは、高島忠夫と寿美花代の長男、高嶋政宏である。

 高嶋政宏は、有名俳優と女優の二世ではあるが、本作の時点では、ドラマ経験が少なく、ほとんど、初出演に近い。

 筆者が、1987年放映の本作を、27年後の2014年~2015年にかけて、改めて、再放送で見直したことは既に述べた。昔のドラマを見ると、面白いのは、俳優陣の栄枯盛衰である。

 特に、本作の伊達政宗役の渡辺謙、松平忠輝役の真田広之が、世界的な俳優になるとは、誰一人、想像もできなかったであろう。

 他にも、陣内孝則・沢口靖子・野村宏伸・高嶋政宏・樋口可南子など、当時、無名に近かった、俳優・女優が、現在、大物になっていることを考えると、非常に感慨深い。

 伊達政宗は、17歳で、父の輝宗から家督を譲れられると、合戦に次ぐ、合戦を重ね、伊達家の領土を飛躍的に拡大する。

 本作の前半では、近隣の相馬氏・佐竹氏・芦名氏等との壮絶な戦いが描かれるが、本作の特徴は、その合戦シーンが、キチンと描かれている点にある。

 戦国時代を描いた、2000年以降の大河ドラマは、出陣までは描かれていても、合戦のシーンは、ナレーションで済まされてしまう場合が多い。

 本作では、メインキャラクター達に加え、大将の政宗本人までが、敵陣に突入するなど、白熱の合戦シーンを、キチンと映像化している。

 本作の最初のクライマックスは、何と言っても、第十二話の父親殺しのシーンであろう。

 無論、政宗は、父の輝宗を殺そうとしたわけではない。

 輝宗が、畠山義継に人質として、拉致されそうになったため、輝宗が殺されるのを覚悟の上で、鉄砲隊に、銃を撃つように命じる。

 その時の政宗の狂った様に、「撃て!」と叫ぶ、苦悶に満ちた表情が、筆者には忘れられない。

 目は血走り、狂気に取り付かれた、政宗の命令に、畠山義継は、伊達輝宗を何度も刺して殺害し、自らも、政宗によって討たれた。

 政宗は、父親殺しの宿命を、生涯、背負うことになる。

 本作の第二のクライマックスは、第二十二話、小田原参陣の前夜、実の母である、お東の方に、毒殺されそうになり、弟の小次郎を斬るシーンであろう。

 父には認められていたが、母に疎まれて、弟を殺した、という点において、伊達政宗の宿業は、織田信長によく似ている。

 信長は、父は病で死に、母を追放することなく、弟を自分の手で殺したわけではない。

 しかし、政宗は、人質として拉致されそうになったとはいえ、事実上、父を殺し、弟を自らの手で斬り、母を追放した。政宗は、信長よりも遥かに、壮絶な宿業を背負ったのである。

 特に、本作では、弟の小次郎は、政宗と対立することなく、兄を慕い、決して、謀反など考えていない、純真な少年として描かれているために、政宗が、自ら、小次郎を斬らねばらなぬシーンは、余計に、政宗の背負わねばらない、過酷な宿業を感じさせた。




[https://tv.blogmura.com/tv_jidai/ranking.html にほんブログ村 大河ドラマ・時代劇]
Top