H.036【真田丸】十三

 段田安則の演じる、滝川一益は、正直、全く、強そうに見えず、猛将の側面は、皆無に等しい。

 しかし、本作の一益は、生真面目で、非常に優しい性格のため、その点においては、段田安則は、見事に合致している。一益は、昌幸を信頼し、沼田城と岩櫃城を返そうとしたほどである。

 しかし、昌幸は、既に、一益を裏切っており、「しまった!」と後悔している。

 滝川一益の率いる、織田軍の撤退後、旧武田の遺領である、甲斐国・信濃国・上野国を巡る、徳川氏・北条氏・上杉氏の熾烈な争い、天正壬午の乱が始まる。

 多くの歴史物語では、この時期、中央における、柴田勝家と羽柴秀吉の後継者争いに焦点が置かれるために、天正壬午の乱が、主題になることは、皆無に等しく、筆者にとっては、新鮮で、面白かった。

 真田家の当主、昌幸は、徳川・北条・上杉の大国の狭間で、真田家を守るため、謀略の限りを尽くして、裏切りに裏切りを重ねる。

 昌幸は、信濃国の国衆を傘下に治めるため、幼馴染でもある、室賀正武を暗殺している。

 室賀を演じるのは、三谷幸喜の劇団時代からの盟友、西村雅彦。

 三谷の脚本に、これほど、ハマる役者は、他にはいないであろう。

 信繁の兄、信幸が、発言する度に、「黙れ!小童!」という、ワンパターンの台詞は、大いに笑わせてくれた。

 そして、十三話において、物語前半のクライマックス、第一次上田合戦が描かれる。

 主人公の信繁の生年には、諸説があるが、1585年のこの年、15歳~18歳程度。

 主力として、参戦したとは、考え難いが、敵を誘導するなど、大活躍を見せている。

 本作の第一次上田合戦は、大河ドラマでは珍しく、合戦の経過を、ナレーションのみではなく、セットを設営し、エキストラを動員し、丁寧に描いている。

 筆者は、合戦を、ナレーションのみでは終わらせない、こういう大河ドラマを待ち望んでいた。

 第一次上田合戦の直前、信繁は、上杉氏の人質として、越後国にいたが、徳川家康の大軍が、上田を攻めると知ると、真田家の危機に際し、上杉景勝は、快く、信繁を上田に送り出している。

 本作の景勝の「義」を重んじる姿が、最も、垣間見える、場面である。

 第一次上田合戦の後、信繁は、上杉景勝、直江兼続、きりと共に上洛する。

 景勝は、自力では、上杉家を保てないと考え、秀吉に臣従することを決めたのである。

 秀吉は、信繁のことを気に入り、信繁は、馬廻衆として、秀吉に近侍することになったのである。

 馬廻衆とは、大勝の馬の廻りに付き従って、護衛、伝令を行う、役職である。

 親衛隊とも言える。信繁が、秀吉の馬廻衆であったことは、近年の研究で明らかになった。それまでは、大坂の陣前の信繁の事跡は、不明な点が多く、真田家の人質として、大坂にいたとの説があった。

 14話の信繁の上洛から、31話の秀吉の死までが、2000年以降の過去の大河ドラマにおいて、飽き飽きする程に描かれ続けた、豊臣秀吉の時代の物語である。

 毎度、主人公が、史実以上に、秀吉に近い存在として、活躍することが多く、本作も、その例外ではない。

 本作においても、長い、秀吉時代が始まったと思い、少々、げんなりとしたが、31話で、秀吉が死去し、意外にも、合計18話で、秀吉の時代は終わった。

 過去の大河ドラマと同様、秀吉と茶々の関係、北条征伐、豊臣秀次一族の刑死を中心に物語が展開する。

 本作では、恐らく、大河ドラマ史上では、初めて、史実である、沼田裁定が描かれる。

 信繁は、父の昌幸に代わり、北条氏政の家臣、板部岡江雪斎を相手に、一歩も退かなかった。



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