H.036【真田丸】四

 特に昌幸と信繁が、西軍に付き、信幸が、東軍に付くと決めた、犬伏での三人の話し合いでは、真田家が分裂するのは、昌幸の謀略ではなく、信幸が言い出したのである。

 そして、本作屈指の名場面である、犬伏の別れには、悲壮感はなく、明るい、家族の団欒の場となった。この明るい、別れの場面は、信幸役が、大泉洋であるからこそ、成立したと思える。

 本作のヒロインは、長澤まさみの演じる、真田家の家臣、高梨内記の娘のきり、である。

 きりは、実在の人物で、信繁の側室の一人であったらしいが、その事跡は、全く、不明である。

 本作では、信繁と同様、事跡が不明であることを利用し、きりを縦横無尽に活躍させている。

 長澤まさみの大河ドラマの出演は、2006年の『功名が辻』、2009年の『天地人』に続く、三作目になるが、前二作は、実在しない、忍者の役であり、特に、『天地人』では、架空の真田昌幸の娘、城田優の演じる、幸村の姉の役であった。

 本作で、初めて、等身大の役となる。

 きりは、信繁に一方的に片想いしており、信繁だけでなく、どこへ行っても、「ウザイ」と言われる、存在である。

 物語の前半は、きりは、視聴者目線でも、「ウザイ」存在であったが、物語が進むに連れて、徐々にそのウザさが、面白くなり、最後は、信繁に、大坂入城を決断させることになる。

 九度山において、信繁が、大坂入城を、躊躇している時、きりが、信繁の背中を押すことになる。

 その時の台詞で、二年前の大河ドラマの主人公で、黒田官兵衛のことを、「何とか官兵衛様が」と、名前がうろ覚えで、三谷幸喜らしく、笑わせてくれた。

 昌幸の娘で、信幸と信繁の姉、松を演じるのは、木村佳乃。

 松は、実在の人物で、物語の序盤、昌幸は、織田信長に臣従し、松は、人質として、安土に赴く。

 本能寺の変の後、信繁は、安土に松の救出に向かうが、松は、記憶喪失となり、行方不明になってしまう。

 記憶喪失はともかく、松が、行方不明になったことは、史料にも記載されており、三谷幸喜の創作ではない。

 松は、物語上、左程、重要な役割は果たさないが、その天然な明るさは、物語を明るくしている。

 武田氏の家臣、小山田氏の一族の小山田茂誠と結婚していたが、信長による、武田氏の滅亡後、夫婦は、離れ離れになり、物語後半で、ようやく、再会を遂げる。

 昌幸の妻で、信幸と信繁、松の母、薫を演じるのは、高畑淳子。

 史実では、本名は不明であり、山手殿と呼ばれ、薫は、三谷幸喜の創作である。

 昌幸は、主君の武田信玄の様に、京の公家の娘を正室に迎えたいと考え、菊亭晴季の娘、薫を妻とした。

 しかし、物語中盤で、実は、薫は、菊亭晴季の娘ではなく、侍女であったことが、昌幸の口から、信幸と信繁に明かされる。

 武田信玄の様な、大名ならともかく、さすがに、武田氏の一家臣である、昌幸に娘を嫁がせる、公家はいなかった。なお、史実では、山手殿(薫)の出自は不明である。
 
 虚言ではあるが、公家の出自であることを、誇っている部分はあるが、昌幸との夫婦仲は良く、子供達に対しても、愛情を注いでいる。

 高畑淳子の演技は、絶妙で、明るい人物とは言い難いが、雰囲気から、コメディ的な要素が滲み出て、存在だけで、笑わせてくれる。
 
 昌幸の母で、真田幸隆の妻、信幸・信繁・松の祖母である、とりを演じるのは、草笛光子。

 とりは、史実では、恭雲院と呼ばれる。

 信繁を可愛がり、何故か、信幸の言葉には、聞こえないふりをする。

 明るく、家族想いであるが、幸隆の正室だけあって、毅然としており、人質の身でありながら、木曾義昌を叱り飛ばし、徳川家康の許では、斉藤由貴の演じる、阿茶局に大切に扱われていた。



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