第2位【ガイウス・ユリウス・カエサル】127.タプソス

 第九軍団と第十軍団を待つ間、カエサルは、無為に時を過ごしていたのではない。

 若く、戦場経験の無い、新兵達を集め、軍事訓練を行ったのである。

 『アフリカ戦記』では、剣技の師範が、新入りの弟子達に教える方法に似ていたと表現している。

 一方、カエサルの古参の兵士は、ガリア人、ブリタニア人、ゲルマン人、ヒスパニア人、ギリシア人、オリエント人と、実に様々な敵と戦った、豊富な経験があったが、象を相手に戦ったことだけはなかった。

 以下は、『アフリカ戦記』の記述である。

 「それで、カエサルは、象を調達させた。この“教材”を前にして、兵士達に説明した。

 象という動物が、どのような習性をもつのか。象の攻撃力とは、どのようなものであり、反対に、戦力としての欠陥は何か。象のどの部分が、攻撃に弱いか。

 投石は、どこを狙うか。槍は、どこを突けば、効果があるか。

 兵士達には、実際に象に手を触れさせながら、それらを学ばせた。

 象を知り慣れるのは、兵士達だけではなかった。

 馬を連れて来ると、象という巨大な動物を前にしても、恐れないように慣らされた。

 最後に、騎兵は、実際に投げ槍を放ち、歩兵は投石し、槍で突き、巨大な動物の倒れるところまで実験した。

 こうして、兵士も馬も、象に向かって来られても大丈夫との想いを強くしたのである」。

 第三陣を待つ時間は、後の勝利へと繋がる、時間となった。

 そして、遂に、第三陣の第九軍団、第十軍団が到着する。続いて、第四陣も到着した。

 カエサルの総勢は、重装歩兵3万、騎兵3千2百になったが、旧ポンペイウス派の残党、歩兵6万と騎兵1万5千の半分以下であることは、変わらなかった。

 カエサル側が、戦闘準備が整った頃、旧ポンペイウスの残党側も、準備が整っていた。

 ヌミディア王国のユバ王が、自国の防衛を配下の将に託し、カエサルに向かって、南下を始めたのである。

 カエサルは、遂に、積極的に攻勢に出ることを決断した。

 しかし、敵には、決戦を急ぐ必要はなかった。

 そのため、カエサルの度々の会戦の挑戦に対し、小競り合いに応じるのみで、本格的な会戦に応じようとしなかった。カエサルは、敵が会戦に応じるように、敵が放置を許されない場所を攻撃する必要が生じた。

 カエサルは、未だ、降伏勧告を受け入れない、タプソスに狙いを絞った。

 タプソスは、海に面した、岬の先端に位置しながら、陸側には海水を湛えた、潟が広がり、その潟を、北と南から、抱くような形で延びる、2キロ余りの細長い陸地で、内陸部と繋がっていた。

 カエサルは、タプソスを攻めれば、敵は、必ず、北と南の陸地部分を封鎖しようとすると予測したのである。

 二つしかない、通路を封鎖することで、敵は、タプソス前に陣取る、カエサル軍を挟み撃ちにしようと狙ってくるに違いない。

 その場合、数においては、二倍以上の敵も、全軍を二分せざるを得ず、戦力の劣勢を補える。

 紀元前46年4月4日早朝、夜中の行軍の末、カエサルの全軍は、タプソス前に到着する。

 そして、陣営地の建設を終えると、即座に攻城戦を開始した。

 無論、タプソスは、敵軍を誘きよせるための「餌」に過ぎないため、本気で攻める必要はない。

 兵士は、交代制で、半分は、攻撃に参加し、残りの半分は、陣営内で睡眠を取っていたのである。



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